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「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

社長とれんど考察

「競 > 争」

2015年9月1日

■競争とは?
中国古典を研究しておられる歴史作家の守屋淳さんは、孫子の兵法とクラウゼヴィッツの戦争論を対比させつつ、現代社会でのビジネスや人生において目標を達成するための戦略はどうあるべきかを著作等で示唆されています。まず、そもそも競争とは何なのかの定義が参考になります。競争を「競」と「争」と「戦場」に分解し、その意味を述べたものですが、すべて大事なものではありながらも、戦う相手は狭い意味での相手だけにあらず、自分を知り、自分に克つことも含まれるというのが象徴的であり、大義、理念こそが生き残る指標となることがよく分かります。何千年も言い伝えられていることは時空を超えた真理であることは間違いありません。

■「競」
まず「競」ですが、例えて言うと、陸上や水泳やゴルフ、受験やコンクールなどにあたります。直接的に相手を倒す必要はなく、スコアや記録、採点などで決まります。この場面においては、自分が誰よりも優れていれば必ず勝てます。そのためには、己に克つことが重要なポイントとなります。実力や魅力など、本当の力が試されるといえるでしょう。ビジネスにおいては、経営理念や経営ビジョンになるでしょうか。他社と比べてどうかというよりは、自分たちで決めた方針や基準に対してどうかという、まさに克己です。パイが広げられる競争でもあります。

■「争」
次に「争」とは、例えれば、レスリングやボクシングなどの格闘技や戦争が当てはまります。勝負の基準が相手との関係にあります。そして、相手を倒さないと勝利することができません。そのために相手の戦う能力や気力を奪うことを目指し、作戦を練り、かけひきを仕掛けます。戦国時代では一発勝負であり、現代ではリベンジありの長期戦という側面もありますが、勝てるかどうかは環境も含めて相対的なものとなります。争いは直接の相手があることから、パイを奪い合うことで消耗戦に陥りやすく、できれば避けたいものであります。ビジネス界でよくある価格競争は消耗戦の典型ですが、後世に価値が残ることはなさそうです。

■「戦場」
そして「戦場」とは、戦う場所を選ぶ、変えるということです。競争には勝たなければなりません。その為には、勝てる戦場を選択する必要があります。最適な戦場の選択に不可欠なのが、己を知るということと環境を知るということです。孫子で「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という有名なフレーズがありますが、ビジネスでいうSWOT分析と同じことです。この場合のポイントは百戦して勝つということではなく、百戦しても負けないということです。戦場の選択、これが意外と難しいと思います。ともすれば、自分の願望だけで選択してしまうこともあるからです。ここでは自らを客観的に見られる謙虚さも不可欠なように感じます。

■不敗
また、孫子には「百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」とありますが、百回戦って、百回とも勝利するというのは、一見良さそうですが、勝ったとしても、自らに損害が及ぶことは必定ですので、そもそも戦わないことが理想です。つまり、戦わないで勝つことが最良と言えます。ビジネスの場面で展開すべき教訓は、ライバル企業との顧客の奪い合いをして勝ったからと言って喜ぶことではなく、いかに情報の格差を作り出し、それによって競合のない戦場を開拓し、創造することで、戦わずに勝つという「不敗体制」を作り出す必要性に気づいて、それに着手することです。

■戦略の目的は勝つこと
まとめますと、真の意味での戦略とは、「競」と「争」と「戦場」といった局面において、最適な振る舞い方を決めることです。そしていかに「争」を避けて、自らに合った、ライバルの少ない「戦場」を選んで、「競」のなかから成果を上げて行くかということです。この成果を上げることを勝つと表現するならば、戦略は勝つために作られるべきものとなります。難しいのは、目には見えにくい点でしょうか。「争」を避けるというと、間違ったオンリーワン的発想に陥りますが、他社と同じように見えても、コンビニのS社のように、「争」を避けた「戦場」で「競」のなかから成果を出されている企業が現にあるのですから、まずは己を知り、己に克つことに真剣に取り組むことが最優先だと思い知らされました。