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「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

社長とれんど考察

「すべきこと 〉したいこと」

2022年6月1日

■鎌倉殿の13人
今年の大河ドラマは鎌倉幕府の誕生前後の物語です。幕府の創始者と継承者が主役となり、まさに生みの苦しみであり、その結果だけではなく渦中であり、最中を描いています。源頼朝は武士による政権を最初に作った武家の棟梁ですが、多くの現代日本人が好むのは、戦国か幕末というのが通り相場ではないでしょうか。それらの他はあまり人気はないようですが、源頼朝や北条義時については、ドラマでもやっているように、親族や仲間、貢献した部下などを次々と粛清していく様子が不人気の要因の一つなのかも知れません。特に、異母弟である源義経に対しては、判官びいきという言葉が現在でも残っているように、実の弟を殺す極悪非道的なキャラクターとして源頼朝に染みついている先入観になっています。

■政治家と軍人
源頼朝と源義経のエピソードは、諸説ありますが、やはり国のトップとしての立場を最優先した政治家としての源頼朝と、兄とともに悲願達成を目指し、平家討伐を最大の職務とする軍人としての源義経という立場の違いが大きいのではないかと思います。つまり、単なる兄弟喧嘩という次元ではないということです。今風に考えてみると、安倍首相が岸さんを大臣にしなかったこととも共通していると想像します。また、岸さんが大臣だったとして、不正を起こしたとしたら、総理は兄の立場でかばうようなことはできません。当然罷免されるのだと思います。八百年前のことですから、武力で処分するしかなかったといえます。このような立場の違いを考慮して考えることは必要だと思いますが、世間はそういう見方をしないものなのです。

■政治家と経営者
大河ドラマでも現されている源頼朝の非情さは、そのポジションからくる圧倒的な当事者意識そのものではないでしょうか。以前、阪急の小林一三が請われて商工大臣をしていた時に、自分の意見が受け容れられない場面があり、確か秘書になっていた息子さんに怒りをぶちまけていた様子が描かれていたドラマで、息子さんに政治家に向いてないのに引き受けたからこうなると言われていたシーンを見たように思います。その心は、自分の会社の社員のために仕事する経営者と全ての国民のために仕事する政治家との違いだと感じました。そうこう考えると、源頼朝は当時の我が国のトップなのですから、私的な身内を優先したり、甘い処分をすることが許されないという自覚があったのだと想像します。

■経営者と職人
それぞれの役割や立場を考えるということは現在でももちろん必要です。役所や企業などの組織においては、幹部や経営者は運営や経営の仕事をしなければなりません。そのなかでも、事業の継続と雇用の確保という任務は一丁目一番地であり、言わずもがなであり、言うまでもなく当たり前のことです。経営者の立場にありながら、経営の任務をしない、できないのであれば、その地位を続けることはできません。もちろん、会社といっても様々であり、我が国の場合は従業員9人以下の会社は約83%あるので、本来の意味の経営をしなくても存続できることはあり得るのでしょう。以前、経営コンサルタントに「担当者の仕事に逃げ込むな」と指導いただいたことがありますが、逃げる方が楽ですし、そもそも経営しない方が合う方もおられます。

■商売と生産
違う観点からですが、外国で修業したパン職人が、大好きなパンを作るという職を断念せざるを得なくなったケースです。いいものを作ることが何よりも大事というのは分かりますが、作るだけで続けていくというのは少し違うように思います。もちろんパンに限ったことではありません。事務的な仕事でも同じようなことが起こっています。こういうケースで欠落しているのは、誰が評価する人かを考えることです。人や仕事に対する評価は他者がするものだからです。自己評価は不要だとは思いませんが、自己評価のみではいけません。こういう場面でありがちなのは、同業他者をけなすことです。パンの例では、スーパー等で売られる大量生産品です。こう考えてしまうのは、どちらがより多くの人の役に立っているのかが分かってないからです。

■販売と技術
同じようなことですが、トヨタと日産の違いを一言で表したものです。両社とも我が国を代表する大企業ですが、どちらがいい会社かと問われれば前社を挙げる人が多いのではないかと思います。未だにメーカー別の販売店しかないことから明らかなように、トヨタの最大の強みは販売にあると言われています。もちろん技術などモノづくりが悪いということはないと思います。販売を最優先するのは、顧客を第一にしているからだと感じます。一方、技術の日産と自ら言うように、技術が第一で顧客は第二と順番が逆になっているのかもしれません。これまでの経緯を見てみると、あながち間違えていないように思います。完成車メーカーなどはそれほど大袈裟にする必要もないのでしょうが、中小企業はやはり顧客を第一にすべきでしょう。

■すべきこと
シスターの故渡辺和子さんは、「今、何がしたいかと同時に、今、何をしなければならないかを、併せて考えられる人になることが大切だ。そして、その両者が競合するときには、しなければならないことを優先して行える判断力と意志の力があったらすばらしいと思いました。してはいけないことに対しても同じです。したくてもしない意思の力です」と語られました。したいことをするのは「自由」ということで、それは素晴らしいことでありますが、その使い方を誤ると、「したい性」という単なるワガママに陥ってしまう危険性を示唆されています。自らの立ち位置と役割、物事や行動を環境や周囲のことをみたうえで、自ら考え、選び取り、判断できる力、洞察力を持ち、「すべきこと」を実践できるようになりたいと思います。