fbpx

「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

社長とれんど考察

「自己実現欲求 > 承認欲求」

2021年7月1日

■マズローの欲求5段階説
長引くコロナループもワクチンの普及とともにようやく先の道筋が見えつつあるようになりました。思えばこの一年半の間、感染者数の増減に世間は振り回されましたが、企業ではリストラが流行しており、中高年にその矛先が向かっているようです。そこで今回はこの現象を「マズローの欲求5段階説」と絡めて考えてみたいと思います。5段階説とは、「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層に分かれていて、ピラミッド状の序列は、低次の欲求が満たされるごとに次の欲求に向かっていくとされる説ですが、なかでも「承認欲求」と「自己実現の欲求」の境目がポイントになるとの仮説のもと考察して参ります。

■自己実現の欲求
マズローは晩年、5段階の欲求階層の上に、さらに自己超越の段階があると発表しているので、ここが最終地点ではありません。5段階説の中では最も高次な欲求ですが、あくまで自分のことです。世のため人のためにはまだ達していないわけですが、「なり得る最高の自分になる」欲求のことです。他人に認められるかとか仲間がいるかとかを基準にする4次までの欲求を超えてでも目指したいというものです。この四つ目と五つ目の間をまたいだか否かが冒頭のリストラの有無に大きく関係するのではないかと考えています。現実にはこの段階に達している人は意外に少ないように感じますが、いくつかのケースの内容を検討してみたいと思います。

■希望年収
働く人である以上、年収〇百万は欲しいと思うことは当然だと思います。なぜなら、それは評価だからです。つまり、まだ働いてもいないし実績もあげていないにもかかわらず、自分に対する評価の物差しとして求めているのです。年功序列賃金のなかで年齢を重ねてくると、仕事内容やスキルというよりも、住宅や家族・学校などのコストを優先してしまいます。もちろん年収〇百万の仕事ができるスキルと経験があると転職先に評価されれば何の問題もありませんが、ここでミスマッチが生じるのです。もちろん例外はあるわけですが、希望年収を前面に出してしまうのは、承認欲求が適正範囲より強いと判断できます。合わせて自己実現欲求は希薄な場合が多いです。

■会社が変わった
転職理由に「会社の方針が変わってしまいました」というものがあります。方針が変わったとは言いますが、理念やビジョンが変わったということはあまりありません。世の中が古今東西にわたり、時代の環境に適合しなければ継続できないと判断しているわけですから、方針が変わらない方がむしろ問題ある会社と考えることもできます。自分は変わってないのに、会社が変わったのが良くないということですが、傾向としては自分の考えや行動を認めてくれない会社が悪いと主張するのは、承認欲求が強すぎることを表していると判断できます。世の中や他人に変われという前に自分が変われとは、ドラマで聞いたセリフですが、概ね当たっているのではないかと思います。

■自分だけ頑張っている
比較的に若い人に多いと思いますが、「自分だけ頑張っている=上司も周りも頑張ってない」と考えてしまう癖を持つ人がいます。転職理由でこのようなことを言ってしまう人は同じ理由で次の会社を退職することでしょう。言わないまでも思い込んでいる人も同様です。長い職業人生ですから、自分が周りの人に助けてもらうこともあるという想像力が少しでもあればいいのですが、自分の経験からいうと年を重ねても治る確率は相当低いと思います。卒業後直ちに入った会社を中高年になってから辞めた人で、転職ループにはまっている人はこの傾向が強いのかもしれません。このケースもやりたい仕事などなく、かつ承認欲求だけが突出していると判断できると思います。

■協調性が乏しい
ごくごく一部のすごい人は例外中の例外ですが、そうではない多くの人は協調性というスキルの高い低いが職業人生を大きく左右します。特に長いこと大企業にいて中高年になって中小企業に転職するケースで表面化します。大企業は仕事も組織も細分化されていて、多少は性格や考え方が合わない人がいても接点を持たなくても問題になることはありませんが、小さな組織ではそうはいきません。良好な人間関係の構築など試験にもでませんので自得するしかないわけですが、スキルや技術は優れていても作業の巧拙だけを承認欲求の対象にしているのでミスマッチが生じ、環境に耐えられずに転職ループに入ってしまうことになります。

■ずっと成長できる人
70歳までの雇用義務が法制化され、ますます働く年数は長くなるばかりです。老後のことを老後になってから考えても遅いというように、先々のことを若い時からおおまかにでも考えていくことは重要になっています。個人毎に事情は違うことは当然ですが、雇用する側の変化もあり、多くの人にとっては生涯「一人一社」時代は終わり「一人数社」が普通になるでしょう。そうなるとエンプロイアビリティの重みが増します。リカレントと言われるような生涯学ぶ姿勢ややりたいことがある人にはそう大きな問題にはならないでしょうが、年齢には関係なく、自己実現欲求に達することができず、承認欲求止まりの人には厳しい時代になるのではないかと考えています。