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「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

社長とれんど考察

「考える > 悩む」

2020年12月1日

■悩むのは思考停止
『イシューからはじめよ』は、2010年の発売当時ベストセラーになった安宅和人さんのロジカルシンキングの書籍ですが、コロナにより加速されたデジタル改革がこれから本格化すると予測される今日、「悩むのは思考停止、考えよう」というこの本の言葉がいよいよ現実味を帯びてきたと思います。もちろん全ての人ができることではありませんが、少なくともビジネスの世界ですでに主体的立場にある、主体的業務を担う、もしくは目指す人には必要不可欠かつ重要なスキルとしてクローズアップされることは必定です。そこで今回は「考える」ことがなぜ求められていくのか、似て非なるものである「悩む」ことの違いを明らかにしながら考察したいと思います。

■働き方改革の進展
「考える」ことの重要性が増している原因の一つに「働き方改革」があります。これは一般的には残業削減としか理解されていませんが、本質は人口減少のなか労働力(量)の確保を目指す経済対策なのです。この数十年、総労働時間数はほぼ横ばいなのに労働者数は増え、安倍政権では有効求人倍率や失業率が改善しました。内容をみると、派遣社員、女性、高齢者が増加し、いわゆる非正規は約38%(2019年)となっています。この是非はともかく、国の経済政策は成功しているといえるでしょう。これからもデジタル化進展という需要に対し、副業の推進や70歳雇用義務化などの供給体制も進むため、正社員が減少するこの傾向が進むことは間違いありません。

■デジタル化の進展
これまで分断されていた仕事のプロセスや情報・データが、デジタル技術の向上でつながることによって、仕事の無人化や省人化、さらに遠隔化や時差化が進んでいます。この変化により、企業は活動範囲が拡大、時差をつけて仕事ができるようになっています。また、二度手間や人手チェック、ミスによるやり直しなどなくなり、作業の効率化が進むことで、企業の粗利があがり、生産性も向上します。このデジタル化はあらゆる分野で進むこととなり、人手で補ってきた作業系の仕事は、その難易度にかかわらず、必要な人員は削減となります。特に難易度が高いとされる作業を担ってきた正社員は減少することは間違いありません。

■アナログ化の進展
このように働き方改革やデジタル化が進む一方、企画や立案、調査や分析などの前工程の仕事はその重要度が増してきます。つまり「考える」仕事です。経済や経営の環境が大きく変化するなか、先を見通して方向性を戦略に落とし込めるか、経営資源を適正配分して広範かつ緻密に計画を立てられるか、組織や人を動かせるか、などの未来活動の中核となる仕事を担える人材はこれまで以上に求められるでしょう。つまり、デジタル化すればするほどアナログ化が進んでいくとも言えます。唯一の正解がないビジネス界では、デジタル技術でもできないことを「考える」スキルが求められ、人事制度も成果型(ジョブ型)になることも必然になってきます。

■考えるとは
では「考える」とは何なんでしょうか。考えたことのない人などいないでしょうが、特にビジネス界では意外と考えてない人が多いのは事実です。子供の頃から、予め用意された唯一絶対の答えを、限られた時間内に数多く合わせることを勉強だと馴らされてきた私たちですから、この癖がなかなか抜けないまま社会人になり、さほど重要な仕事が与えられない若手社員の時分は表面化することないまま、年齢やポジションが上がってから組織とのミスマッチを起こす方が多いように感じます。いつのまにか腹筋や腕立て伏せができなくなるように、中高年になってから考えようとしても、意に反してできなくなってしまうのではないでしょうか。

■悩むとは
「考える」ことを「悩む」ことと同じだと勘違いしている場合も多々ありますが、自分なりの解を導き出すために頭を使うことが「考える」ことで、解のないことに頭を使うことが「悩む」ことです。「悩む」のは思考停止の状態で、過去や現在に固執して未来を見ていない状態とも言えます。悩んでいる間は、答えが出ず思考が堂々巡りしてストレスが溜まりますが脱出するためには、その状況や理由を把握して、アクションを起こすことです。適切な人に話すのが解決法ですが、書物などで先人に聞いてみるのも一計ですし、紙に書き出してみるのも効果的です。何より大事なのは、自分が考えてるつもりから脱し、悩んでいるだけの状態にあると自覚することかもしれません。

■イシューからはじめよ
ビジネス界で難易度が高い課題を継続して解決するには、ある程度の経験と見立て力は必須ですが、トレーニングしながら様々なチャレンジをしなければ身に付きません。また、先のアナログ化とは未来を考えることでもありますが、未来を見るためには、現状の問題点を明確に把握する必要があります。それこそがイシューです。つまり「着手すべき課題」を起点に考えることが大切になります。そのためには「具体的な仮説を立てること」「考えるための材料をざっくりと得ること」などの習慣を身に着けることが大事です。考えている状態は、答えが出る、次々にアイデアが考えつき、次に何をすれば良いかがわ分かるようになり、時代の波を乗り越える礎になることは確実です。