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「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

社長とれんど考察

「抽象的 > 具体的」

2019年9月1日

■人生百年時代
医療技術や食糧事情などの進化発展により、我が国の平均寿命は延び続け、これからは「人生百年時代」だと言われています。また、少子化も同時に進んでおり、働き方改革の一つとして、リカレント教育の重要性が議論されています。これまでより働く期間が長くなることが予測され、若い時分に勉強して身につけた知識や技能だけでは、環境の変化に対応できなくなるため、社会人となってからも学んでいかなければならないということです。今さらという感じがしなくもないですが、合わせて考えておくべきは、仕事をやめてから終わるまでの期間も長くなることから、いわゆる老後を健やかに過ごすためにもリカレント教育は必要だということです。

■時短の必要性
私事ですが、近頃、世間で言うところの定年年齢に近づいていることを実感するようになりました。これまでのビジネス人生を少し振り返りますと、年齢やポジションが高まるに連れ、求められるものが広く深くなり、何かと仕事の難易度が高くなってきたと感じてきました。同時に体力面では少しずつ衰えていくこともあり、不惑や厄年を超えたことから、それまでに経験したことのない仕事に取り組むときに、新しいことをいちいち覚えなくても、本質や源などの大元さえ押さえておけば、そこから類推して必要なものが湧いて出るようにできれば、知識や情報を習得する時間が短縮でき、気分的にラクチンに仕事の幅や深みを広げられるのではないかとの仮説を立てて参りました。

■前半生の勉強法(具体的)
振り返ってみますと、学校に行っている間は、勉強とは暗記のことでした。試験とは答え合わせのことでした。限られた時間の中で、予め決められた唯一絶対の正解を、いかに多く合わせられるかを競うことが求められているのです。詰め込み教育とか暗記偏重とか批判はありますが、かといって、余程の天才は別として、普通は一定の基礎知識がない人に創造力など芽生えるはずもありませんので、学校にいる間は間違っているとは思いません。問題なのは社会に出てからです。社会には唯一絶対の答えがない場合が多いからです。せいぜい暗記型が通じるのは、大して難しい仕事が求められない若手社員の間までです。ここあたりから、勉強法の転換が必要になるのではないかと思います。

■暗記型からの脱却
ビジネスの場面でも、例えばセミナーや研修では、多くの参加者は「答え」を求めます。かといって、具体的な答えを教えてもらえたとしても、それを聞いた人が、実践できるようになったり、身に付けることはまれでしょう。こういうことはいつの時代も共通しており、有名な逸話があります。松下幸之助さんの講演の会場、「ダム経営はどうすればできるのですか」と質問した人に「ダム経営しようと思うことですな」と幸之助さんは答え、多くの聴衆はガッカリしたらしいのですが、「そうか、ダム経営しようと思えばいいのか」と感動した人がいました。その人は稲盛和夫さんだったというものです。多くの人にとって、答えを求めてしまうことが身に染みている典型的な例の一つです。

■後半生の勉強法(抽象的)
暗記型から脱却するには、細谷功さんの著書が参考になります。答えを求めるということは、具体的なものを求めることです。具体化のデメリットは、事象を一つ一つ別物とするので、広がりが限定されることでしょうか。対して、抽象的とは、分かりにくさや曖昧さの代名詞とされるくらいですが、小職の考えでは、「同じもの」はないものの、「同じようなこと」はあると思いますので、複数の事象の共通項を探すことが抽象化になるのだと思います。同じようなものに応用が利くことに気づけばメリットになります。別々な二つの事象を暗記すると労力2必要だとすると、二つを俯瞰的に見ることによって共通項を見出することで労力を1.5にできるイメージです。

■具体・抽象ブレンド
会社でも、社長が「理念やビジョン」を語るのを見て、社員が「そんなことより具体的に売上の上げ方を教えてくれよ」と思っているという構図はよくある話ですが、具体的なことは、現実性や実現性も高い一方で、近視眼的になりがちです。反面、長期的で理想的なものは抽象的な表現となるものです。したがって、どちらか一つだけでなく、両者を有機的にうまくつなげた目標設定が有効ということになります。また、前半生は知識と情報を詰め込むことインプットを主とし、それを活かして後半生はアウトプットを主としつつ、インプットは短めに転換していくということでもあります。要は、具体も抽象も両方とも大切ですから、ブレンドして考えるべきものだということでしょう。

■人生の全う法とは
仕事に就いている間は、年齢と共に体力面から、時間をかけられなくなるので、比較的短い時間で、課題を解決できる働き方ができればいいと思います。また、仕事を退いたあとは、鴨長明や浦上玉堂のように、具体的に決め過ぎて選択肢を狭めるのではなく、抽象的に色んなことに興味を見出し、暇つぶしのネタをいくつも持てるようになれればいいなと思います。このような生き方をされている方々は、具体的なものを抽象化することにより、物事の本質を押さえつつ、場面に応じて「具体か抽象か」を上手に使い分け、最善の方向に進められる人たちです。あまりこれだと決めつけ過ぎず、束縛されず、自由度の高い働き方や生き方をして参りたいものです。