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「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

社長とれんど考察

「成長 > 成果」

2018年12月3日

■イノベーションとは
目先の成果を取るべきか、将来の成長を取るべきか、ビジネスの場面では悩ましい選択を迫られることがあります。もちろんケースバイケースですが、基本的には成長につながる可能性を重視したいと考えています。では成長の可能性をどう見るかですが、ドラッカーは「経営とはマーケティングとイノベーションである」と言いました。顧客価値の最大化を目指すマーケティングと従来はなかったものを生み出すイノベーションを絶え間なく行なうことが経営を継続するために重要だと実感します。イノベーションこそが成長の可否を握るといっても過言ではないと思います。そこで今回は、転換期にある現代日本に求められている、イノベーションについて考えることにしました。

■イノベーターの条件
イノベーションを生み出す人を「イノベーター」と言います。どんな組織でも「イノベーター」が必要、というのはよく言われることですが、実際はどうやったらイノベーションを起こす人材になれるのか、唯一絶対の答えはないのですが、クリステンセンの『イノベーションのDNA』を参考にすると、イノベーターに必要なスキルとして、①関連づける力・②質問力・③観察力・④ネットワーク力・⑤実験力の五つがあげられています。この中から、アイデア発見の第一歩となる気づきを得るための素である質問力について、質問をする際の観点として四つ挙げられていますので、これらをひとつずつ紐解き、イノベーションを引き起こすことにつなげたいと思います。

■「いまどうなのか?」
最初は、現状把握するために「本当はここで何をしようとしているのか」を自問自答します。思いつく限りの「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「どのように」の質問をし、表層を掘り下げます。問題を解決するような創造的なアイデアを思いつくためには、これに気づくことがなければイノベーションには辿り着きません。このような気づきが発端となり、解決策を考えて、考え抜いて、磨いて、磨き続けて、新しい価値の創出につながっています。経営者はその直面する問題を解決できないから苦しむのではなく、問題が何であるのか分からないから苦しむ」という言葉もありますので、これは意外と難しいことです。現状把握をするための時間を定期的に設ける必要がありそうです。

■「なぜこうなったのか?」
「いまどうなのか?」を把握できたら、次は「なぜこうなったのか?」です。これは経緯と動機を探ることではないかと思います。どんな物事も突然に起こったり、現れたりすることは有り得ません。因果関係を明らかにする質問を通して、なぜ物事が今の状態になっているのかを詳しく理解することです。「こういうものだと思っていました」とあるのが当たり前と思い込んでいるところからイノベーションが生まれることはありません。イノベーターは、「何のために仕事するのか?」「誰の役に立ちたいのか?」等々、明確な目的意識を持つことが必須ですが、常に真剣に考え続けることから、「今これがあるのはこういう経緯があったからか」と読み解くことができていくのだと思います。

■「なぜなのか?」、「なぜ違うのか?」
新しい解決策を探すためには、この質問をとことん問いかけます。実態を把握し、経緯と動機が分かったとしても、それがなぜ今もあり続けているのかが分からなければ解決できません。対象とする物事に深入りする必要があります。世の中はどんどん進化していますが、まだまだ不便なことや不満に思うことは多くあります。これらの課題や困りごとを表面だけを見るのではなく、その大きさ、重さ、背景や構造などを深く考えることが求められます。対象を破壊するような質問をなぜなぜと五回は繰り返すのです。なぜを追求するといえば、科学者や哲学者みたいですが、イノベーターの質問は一見すると素朴な疑問を投げかけるようで、実は現状に対して常に挑戦的なものでもあります。

■「もし~だったら」
この質問をすることで、問題を新しい角度からとらえます。制約を加える質問では、「顧客のいまの可処分所得が半分になったら、自社の製品やサービスをどのように変える必要があるだろう?」のように制約を逃れる方法を考えます。「制約」を取り除く質問では、制約が「資力」によるものなら価格を劇的に下げられるようなアイデアを、「スキル」によるものなら素人にでも使えるような解決策を考えます。これは、薩摩藩がやっていた「郷中教育」の詮議という実際にはない状況を仮想させて対処を考えさせるシミュレーションを事前に徹底して考えさせた訓練と同じことです。倒幕のパワーとなった人材の育成につながったという結果からみれば、イノベーションには最適な思考でしょう。

■人間力の問われる時代に
質問をすることがイノベーションに重要だとわかったとしても、質問をすることはなかなかできません。質問を阻んでいる最大の要因は、「バカに見られたくない」とか「協調性がない人間だと思われたくない」などの考え方が染み付いているからです。質問するには、ニュートラルに物事を見られる力が求められます。もちろん、質問だけではイノベーションが生まれることもありません。評論家ではなく、当事者にならないといけません。これからのAI時代に求められているイノベーターは、課題を解決するんだという強い意欲と圧倒的な当事者意識を持ち、質問を掘り下げて思考を深め、さらに周囲を巻き込むという、まさに人間力が、従来以上に問われているのだと思います。