社長とれんど考察

「楽観 > 悲観」

■チャーチルの名言
「悲観主義者はすべての好機の中に困難を見つけるが、楽観主義者はすべての困難の中に好機を見いだす」とは、第二次世界大戦中イギリスの首相を務めたチャーチルの言葉です。私たちはコロナ禍で困難の中にある現代に生きていますが、生死の狭間にあるなど、相当に激動だった戦争の時代にトップリーダーとして生き抜いた人の言葉には説得力があります。意外にも知られてませんが、チャーチルは戦後ノーベル文学賞を受賞した文才でもあります。チャーチルは数々の名言を残していますが、人間社会の禍福や人間の強みと弱みを知り尽くし、言葉を最大の武器にした稀有の人物なのです。今回はこの名言からコロナ対策のヒントを導きたいと思います。

■ネガティブ本能
チャーチルは自らも悲観的だと分かっていたからこそ、自分を楽観的な方に向かわせるために冒頭の言葉を発したのでしょうか。人にはネガティブ本能というものがあることを掴んでいたようです。人間の本能を十個にまとめてその対策を解説した『ファクトフルネス』によると、ネガティブ本能とは、人が誰しも持ち得る、物事のポジティブな面よりネガティブな面に注目しやすいという本能です。同書には、現状を正しく理解するためには、世界は、「悪い」状態と、「良くなっている」状態を両立していると理解し、悪いニュースはドラマチックに報じられることが多いため、良いニュースよりも広まりやすいのだと考えることによって解決に向かうとの処方箋が書いてあります。

■悲観主義
人間にネガティブ本能があるなら、悲観主義者が多いのは当たり前です。悲観主義の良いところは、将来の危機や危険に対して予防的措置をとることができることです。「売り上げ減少に備えて経費を削減する」、「老後に備えて貯金をする」、「太りたくないから運動する」などはその例です。一方、過度の悲観主義はチャーチルが言うように色々なチャンスについてマイナス面ばかりに注目してしまいがちになります。これではやるべきこともやれず、進歩も発展も望めません。悲観が行き過ぎると、希望を失うという最悪のケースになります。本当はチャレンジしていたら成功できたのに、悲観に支配されて行動できず、みすみすチャンスを逃すことにもなりかねません。

■楽観主義
片や、楽観主義の良いところは、逆境においてもチャンスを見出し、目標の達成を信じて前進できることです。最初から自分自身が諦めていたら、何一つ実現することはできません。楽観主義者は、まず何よりも自分を信じることができる人ですが、このタイプにも大きく二つあります。一つは悲観な部分(リスク認識)も残しながら、過度に悲観的に陥らないよう、自分を楽観の方向へコントロールできるタイプです。もう一つは、過信するか、お気楽に過ぎるタイプです。例えば、将来を心配しないがゆえに食べ過ぎ、飲みすぎ、タバコなどの不健康な生活習慣を続けてしまい、病気になってしまうような場合です。楽観に過ぎるのも良くない結果への道筋なのかもしれません。

■楽観と悲観の違い
楽観と悲観の違いは何でしょうか。楽観は「現在」と「未来」がワンセットであるのに対し、悲観は「過去」と「未来」がワンセットだという説があります。楽観者は、自分が望む未来の状態を想定し、そこから逆算していま自分がやるべき行動を決めることや制限することで未来に対して自信を持って臨める状態に持っていきます。対して、悲観者には「未来」と「過去」があるだけで「現在」がないため、行動しているはずの「現在」は、何も決められず、いつも彷徨う時間になっているようです。チンパンジーには「過去」と「未来」はなく「現在」しかないということを聞いたことがあります。過去への後悔や、未来への心配や不安がないことは羨ましいですね。

■楽観と悲観のバランス
悲観主義か楽観主義か、どちらか一方という人はいないと思います。人は時と場合によって、悲観主義だったり楽観主義だったりするものです。難しいのは両方のバランスをいかに取るかです。そのスタートは、人は物事のポジティブな面よりもネガティブな面に反応しやすいということに気づくことが大切になります。はじめからネガティブな情報に意識が向きやすいと知っていれば、前もって心づもりができ、準備や対策ができるようになります。このバランスは常に最適かチェックしなければ、どちらかに偏ってしまいます。両方バランスよく物事を見ることができるようになれば、今まで見えなかった世界が見えてくるようになるかもしれません。

■コロナ危機に対して
荀子は学問の目的を「窮して困しまず、憂えて意衰えず、禍福終始を知って惑わざるがためなり」と言いました。窮するということ、心配事というものは、人間として常にあることで免れないことです。たとえ色々な不安や困惑を感じても、それを抑え、それを処理し、平然として変わらずに仕事ができるかどうかを問うているのです。チャーチルの言葉も同じです。ビジネスの場面でも、問題が生じた時、ネガティブな捉え方に偏っていては良い解決策は導き出せないケースは多いものです。発想の転換という言葉がありますが、チャーチルは、「楽観主義者になれば困難を迎えても、好機を導き出せるのだ」と現代のコロナ禍にある私たちに説いているように感じました。