社長とれんど考察

「共存 > 闘い」

■緊急事態宣言
コロナ禍が長期戦の様相を示してきました。ノーベル賞受賞者山中教授は、「僕も最初は“ウイルスとの闘い”という表現を使っていたんですが、今はもう使っていないんです。“ウイルスとの共存”だと思っています。このウイルスを完全に世の中からなくすことは不可能ですので、いかに人間社会が受け入れるか。(中略)ある程度の我慢、ある程度の工夫はおそらく1年、もしかしたら1年以上必要かもしれません」とウイルスとは闘うのではなく共存すべきだと話しました。人類が根絶した感染症は、天然痘だけだそうなので、山中教授が言われるように、これからも人類は感染症と共存するしかないのだと思いました。今回は脅威との共存を考察してみたいと思います。

■感染症の歴史
人類は太古の昔から感染症と闘ってきました。発生原因も治療方法も十分に確立されていなかった時代には、感染症の流行が歴史を変えるほどの影響を及ぼしました。有名なのは、14世紀にヨーロッパの全人口の3分の1ほどの人が死んだペストがあります。また、世界で4000万人以上が死亡し、第一次世界大戦を終わらせたかもしれないとも言われるスペインかぜの大流行もありました。現代でも、香港かぜ・鳥インフルエンザ・SARS・新型インフルエンザ・エボラ出血熱・マイコプラズマ肺炎・ノロウイルス感染症・季節性インフルエンザなどなど、あげればキリがないくらいです。また新興感染症もいつ現れるか分からないので、私たちは常に脅威にさらさられいます。

■脅威の分析
企業が万が一の場合に備えて作成しておくべきと言われるのが「事業継続計画」(Business continuity planning, BCP)ですが、その万が一の脅威として、「疫病」「地震」「火災」「洪水」「サイバーテロ」「サボタージュ」「ハリケーン又は大きな嵐」「停電」「テロリズム」「窃盗」「基幹システムの偶発的故障」などが挙げられてます。ビル・ゲイツ氏は、5年前の講演で、私たちの世代が最も恐れ準備を進めるべきなのは「戦争による核爆弾」ではなく「空気感染するウイルス」だと語っていたとのことですが、企業活動継続における最大の脅威は疫病・感染症・ウイルスと言っても過言ではないことが今回のコロナで明確過ぎるほど、明白になってしまいました。

■脅威との共存
企業も個人も通常の活動や生活を続けるためには、これらの脅威と共存するしかないようです。山中教授が言うまでもなく、脅威はなくすことができないからです。できることがあるとすれば、脅威を避けることと、脅威が避けられない場合は被害の最小化を図ること、そして脅威が去った後の復旧を素早くできるように備えて置くことでしょうか。しかし、これは言うは易く行うは難しです。人は忘れやすくて飽きやすいからです。今回の緊急事態宣言下でも気楽に遠くに外出する人もいるように、所詮は他人事で当事者意識がないか、弱いか、続かないからです。コロナの経験をしたから、普段から脅威に対して、圧倒的に当事者意識を持つという決意をすることが必要です。

■「好況よし 不況さらによし」
今、不況さらによしなどと言うと怒られそうですし、自分もそうだとは思えないのが正直なところですが、経営者として戦争も体験した松下幸之助氏は、長年の事業経験から、「三年に一ぺんくらいはちょっとした不景気が来る、十年に一ぺんくらい大きな不景気が来る」と認識していました。悪い時もあれば当然良い時もあるわけです。要は不況になるのは当たり前で、ある意味、不況と共存して経営すべしと考えていたのです。凡人である小職などは、良い時だけを考えて、悪い時がないようにしようとしているのです。不況を嫌って否定し、闘おうとしても贖えるわけがありません。やはり経営の神様は胆力が違います。事業継続と雇用確保の本質が見えたように感じました。

■「未来が早くやってきた」
経営コンサルタントの小宮さんは「コロナの影響で、未来が早くやってきた」と言われます。その一つがオンラインサービスです。テレワークも東京オリンピック開催中に混雑緩和のために進めるよう東京都では勧めていましたが、コロナの影響で前倒し、かつ加速されたことは間違いありません。他にもネットショッピング、飲食店の出前、動画配信サービスなど、近い将来には当たり前になると言われていたことも同様です。さらに、テレワークする人が増えると、オフィスに出社しなくても仕事ができるように、ネットやハードなどのインフラとともに、業務処理ソフトのクラウド化も待ったなしになったと実感します。まさに、未来は早まってきたのです。

■不況克服の心得十カ条
世間が落ち着かないと不安に陥りますが、こういう時こそ幾度もの危機を乗り越えた先人の知恵が心に染みます。松下幸之助氏の不況克服の心得十カ条です。『1.「不況またよし」と考える、2.原点に返って、志を堅持する、3.再点検して、自らの力を正しくつかむ、4.不退転の覚悟で取り組む、5.旧来の慣習、慣行、常識を打ち破る、6.時には一服して待つ、7.人材育成に力を注ぐ、8.「責任は我にあり」の自覚を、9.打てば響く組織づくりを進める、10.日頃からなすべきをなしておく』。基本に忠実に経営することの大切さを実感し、未来が早まっているトレンドを的確に見極めることができれば、こういう時期だからこそビジネスチャンスが生まれるということなのでしょう。