社長とれんど考察

「見えないものを見る > 見えるものを見る」

■新型コロナ禍
世界中で新型コロナの猛威が強まるばかりで、収束の気配が全くみえない情勢です。我が国でも外出の自粛要請などの影響が個人の生活レベルを超え、ビジネス全般で企業心理の急速な冷え込みが避けられそうになく、11年前の「リーマンショック」を超える悪化が懸念され、まさに「コロナショック」の様相を示しています。ビル・ゲイツ氏は、5年前の講演で、私たちの世代が最も恐れ準備を進めるべきなのは「戦争による核爆弾」ではなく「空気感染するウイルス」だと語っていたと報じられています。ウイルスは目に見えないものですが、ゲイツ氏には見えていたということでしょうか。今回は「見えないものを見る」ということを考察してみたいと思います。

■見えないものとは
この世の中で目に見えないものはたくさんあります。まず、真っ只中にあるウイルスは見えません。台風や雷などは気象予報の発達により見えるようになりましたが、噴火や地震は予知が難しく見えません。また、戦争も古くは相対で戦っていたので見えていましたが、北のように遠距離ミサイルなどの時代になってくると、見えなくなって来ています。実際にあちこちで頻発しているテロも目に見えません。ビジネスの場面においても、会社や人の今の姿は見えるものの、見えている姿を形成してきた経緯や歴史は見えません。さらに行動や言動は見たり聞いたりできますが、その動機、態度、希望、心配などの心理面は見えないか、もしくは見えにくいものです。

■見えるものしか見ないのが普通
自然災害は予報などを知っていたとしても、晴天や穏やかな波などを見ていると大丈夫だと錯覚してしまうことも多々ありますので、すべての人が見えるとは限りません。気象警報が出されている日に、晴れていた川の下流で遊んでいた幼児が、上流に降った大雨がアッという間に下流に押し寄せ、流されて死亡した事故が実際にありました。下流にも雨が降っている、もしくは降りそうな状況ならばこのような悲劇は起こらなかったでしょう。ビジネスの場面でも、表層的な問題しか見えないのが普通です。その程度の問題であれば解決できることもありますが、難易度が高いことに対しては、見えないものを見られるように心掛けるしか対策できないように感じます。

■見えないものを見ないデメリット
「トイレットペーパーがなくなる」など、コロナウイルスをめぐる間違った情報がネットを通じて拡散することが問題となっていますが、国内の研究機関は、フェイクニュースは若い世代より中高年のほうが「信じやすい」(60代84.4%、50代80.1%、40代74%)とする調査結果まとめました。研究員は「中高年世代は、自分の考えに自信があることで誤った情報を信じてしまいがちになっている可能性がある。」と話しています。私も50代ですので、これまでの経験が刷り込まれているので要注意ですが、見えないものを見られるようになれる方が、メリットが大きそうですので、自分だけは大丈夫と無意識に思ってしまうバイアスに気づかなければなりません。

■見えないものを見られるメリット
月末の新聞に「ドイツ際立つ低死亡率 0.7%、イタリアは10%」という記事がありました。ドイツの感染者数は、世界でも5番目に多いものの、死者数は他国とくらべて圧倒的に少ないということです。企業の対策にも差が出てきています。スカイマーク佐山会長は、資金繰り不安への質問に対し、「現在の局面をしのぐにはやはり現預金を持っていることが大事だ。経営では何年かに1度、想像もつかないことが起こる。そうしたことに備えて、体力を蓄えておくのは経営者の使命だ」と回答し、普段からの備えの有無が有事への対応を決めると示唆を与えてくれているようです。国にしろ、企業にしろ、個人にしろ、見えないものへの対策の巧拙が決め手になるといえるでしょう。

■見えないものを見るべき人とは
田坂広志さんは著書の中で、「政治家や経営者は昔から、多重人格でなければ務まらない職業である」とし、様々な場面や状況に応じて、自在に対応を使い分けられることが高度に求められると断言されています。ということは、表層的に見える部分だけを見ているだけでは成り立たない職業だともいえると思います。「器の大きな人物とは、自分のなかに幾つかの自分、幾つかの人格を持つことができるかという意味での器を持っている者である」とし、単に数字に強く管理が巧みな者が優れた人物とする風潮には批判的です。見えるものしか見ないのが普通ですが、政治家や経営者の見える部分しか見ないのは、実はとても危険なことなのかも知れません。

■見えないものを見るためには
中高年世代は、自分の考えに自信があるのはいいのですが、実は頭が固くなっているだけです。見えないものを見るためには、自分の中にある常識を疑って、疑って、疑って、本当にこれが真の原因だと、自分の目線だけでなく、客観的に見ても自信をもって言えるレベルまで掘り下げようとする姿勢が重要です。当たり前だと思い込んでいる前提を変えてみるところにこそ、新しいことやより良く変革するためのヒントが潜んでいるものです。そうなるためにはどうすればいいのでしょうか。田坂広志さんは、文学や映画を通して、真の教養を身に着けることで、人間像を広げ、人間観を深めることが重要だとされています。そう簡単な近道はなさそうな世界のようです。