社長とれんど考察

「イミテーション > イノベーション」

■2019年は己亥(つちのとい)
皆様、あけましておめでとうございます。昨年はお世話になりまして誠にありがとうございました。今年もよろしくお願い申し上げます。さて、2019年の干支は己亥(つちのとい・きがい)です。干支は十干と十二支を組み合わせた60個で一回りする(還暦)ので、亥年は12年に一回ですが、つちのと・亥年は60年に一回で、36番目になります。今年の干支は、ステップアップする大事な時期にもかかわらず、あふれんばかりの精力がそれを邪魔してしまうという意味があり、調子に乗り過ぎるとチャンスを失いかねないらしいですが、調子に乗り過ぎず、迷わずやるべきことを継続し続ければ、先々に大きなステップアップが望めるかなり良い年になるとも言われています。

■真のイノベーターになるには
今年を良い年にするには、いま現在の状況が良くても良くなくても、将来に向けより良い状態を目指して、地道な積み重ねが大切というのは王道だと思います。どんな時でも常にイノベーションは必要だということです。特に、ビジネス分野では、イノベーションが必要とか、他社との差別化が大事とか、常に進化と個性が求められています。その実現に向け、ビジネス人はしのぎをけずるのですが、他社・他者と違った新しいことをしようとし過ぎたために、却って失敗してしまうことがよくあります。そこで今回は、このようなイノベーションの呪縛から逃れ、イノベーションを実現する人、真のイノベーターになるにはどうすればいいかを先月に引き続き掘り下げてみます。

■佐々木常夫さんのイミテーション
元東レ役員の佐々木常夫さんは、イノベーションの大切さを強調しながらも、著書で「プアなイノベーションより、優れたイミテーションを」と述べています。骨子は、「イノベーションは突然湧くものではなく、日頃の学習の積み重ねで発現するもの。日頃の仕事でも、いきなり自ら考えるより、先輩の優れた遺産を活用しながら皆で知恵を出し合ったりする方がはるかに効果的である。」「自分の頭を使うより先輩の作った優れた作品(書類)を盗みなさい、優れたイミテーションを繰り返しているうちに優れたイノベーションができるのだ。」「40代になったら今度はイノベーションだけですが、20代・30代のうちはイミテーションをやらなければダメだと思います。」というものです。

■吉越浩一郎さんのTTP
続いて、トリンプ元社長の吉越浩一郎さんは「TTP」です。Tettei Tekini Pakuru(=徹底的にパクる)の略だそうです。「天才経営者ならともかく、私のような凡人には、千里眼のような能力はない。バブルの時は、これが日本の実力だと勘違いしていたくらいだ。そんな私が個別の施策を考える上でとった方針は、TTPであった。TTPといっても何かの化学物質ではない。他社のよいところを”徹底的にパクる”ことを信条としたのだ。残業削減、早朝会議、”さん”づけ運動も、他の会社の制度をパクったものである。」とのこと。他の良いところを徹底的に真似すべしとは、佐々木さんとも共通しています。要はその方が確実で早く成果が出せるということでしょう。

■松下電器のマネシタ
最後は元松下電器です。同社の戦略は、他社の作った製品を真似して類似製品を作り、それを圧倒的な販売網の差を生かして売ることと言われていました。せっかく画期的な製品を開発しても、最大手の同社にすぐに真似されては、差別化ができません。皮肉を込めて同社を「マネシタ」電器と呼んでいたということです。同社が行っていた模倣戦略は、「同質化戦略」と呼ばれるもので、ブランド力や生産力・販売網などで優位に立つ企業は、ライバル企業と同じような製品を作って売ることが、最も効率的に稼げる手段になるのです。もちろん知財侵害は論外ですが、それ以外のところで他の良いところを徹底して真似ることが競争優位になり得るという事例といえるでしょう。

■温故知新
これらのように、企業であれ、個人であれ、優れたイミテーション、TTP、マネシタ等々、先人の遺産をフルに活用し、知恵やノウハウを身につけることを、昔から「温故知新」(おんこちしん)と言うのだと思います。昔のこと、先人のことを徹底して研究すると、そこから新しい考えや知識を引き出せるという故事です。ということは、いつの時代でも新しいことは、それより前にあったものを改良したものに過ぎないとも言えます。自分が迷ったり悩んだりしたときに、他の人はどうしているのかなとか、昔の人はどうしていたのかなとか、人に聞いたり、本を読んだりして、他人や先人の経験を参考にさせてもらうことは、日頃よくありますが、これこそ温故知新の実践だと思います。

■希望ある2019年に
どうやら、古今東西、「イノベーションはイミテーションから始まる」のは間違いなさそうです。そして真似ることは悪いことでもありません。日本はプロダクトイノベーションではなく、プロセスイノベーションだと揶揄されて言われますが、それでも世界有数の豊かな国になりました。何を作るかも大切ですが、どう作るかも同じくらい大切だからです。今はしゃがんでいるようですが、それは高く飛ぶための準備期間だとも言えます。デジタル時代が本格的に到来すると言われますが、我々も優れたイミテーション、TTP、マネシタ、温故知新から新たな一歩を踏み出そうと思います。本年も引き続きまして、エムザスを何卒よろしくお願い致します。