社長とれんど考察

「観る(把握) > 決めつけ(判断)」

■最近のハラスメント問題
先月は、モリ・カケ問題も霞んでしまうほど、連日大々的に報道されたのがN大アメフト部の問題でした。これに先々月に問題となったZ省のトップのセクハラ問題も加えて概観しますと、共通する要因として、「今まで許されてきた(とされる)ことをやり続けてしまったこと」と「優越的な地位を利用したハラスメント行為をしていること」があるように感じます。是非はともかく、いずれも組織として、幹部として、危機管理意識の欠如が招いた問題でありますが、我が国で知らない人はいないくらいの有名で歴史のある組織やチームで、このようなことが起こる原因は何なのか、自分や自分たちが同じようなことをしないためにはどうすればいいのかを考えてみました。

■治療の基本は把握
医者が患者の病気を治療するには、まずは現状を把握することが必須ですが、今後の対策を考える前に、まずは問題を把握することが必要です。二つの事案の場合、ことがここまで大きくなってしまったのはなぜでしょうか。一つ目は、自分のため、自分たちのためのことしか考えていないことです。したがって、相手のこと、その内面のことまで観ることはありませんでした。二つ目は、昨今のハラスメント問題など世の中の変化を観ていないことです。字面は知っているはずですが、意味を理解していないことは明白です。これは、人や社会など、周りを観ることなく、自分勝手にこうだ・こうあるべきだと判断・決めつけていたことが根底にあるように感じます。

■ボトルネック
そもそも、人は正しい判断をしようと思っているのに、ミスをしてしまうのはなぜでしょうか。これまでの類まれなる経験やそこからくるプライドが積み重なって蓄積し、手段を選ばず勝ちさえすればいいと刷り込まれてしまうと、相手のことや世の中の空気の変化は観えなくなってしまうからです。そして、自分の思い通りにならない相手に対し、攻撃的な態度をとります。不機嫌な感情を表情や態度から出す言語外のコミュニケーションは、ほとんどの場合、本人は気づいていません。事を起こした時、後もまだ気づきませんでした。これでは正しい判断は不可能です。つまり、ボトルネックは自分自身にあることを発見できるかどうかが大きな鍵なのです。

■アンガーマネジメント
相手や社会のことが観えないのは、自分の感情をコントロールできていないからです。内面に自分の欲と慢心、好き嫌いと怒り、そして迷いが渦巻いていて、素直な心理状態ではないということです。感情を制御するトレーニングをアンガーマネジメントと言って、ビジネス界でも特に幹部社員に求められているようですが、これは現代に特有なことではありませんでした。何と2500年も前にお釈迦さんは、怒りは人間の心の中にあり、人間にとって最大の敵だと教えていたのです。人間はいつの時代であっても、「先入観」と「好き嫌い」を取り去り、いきなり判断し決め付けるのではなく、物事を素直に観察することで、より良い結果につなげようと努力してきたようです。

■強く願うことですわ
しかし、自分の感情を自分でコントロールすることは、極めて難しいことです。どこから手をつければいいのでしょうか。松下幸之助さんと稲盛和夫さんの有名なエピソードが参考になります。あるとき、中小企業の社長を対象とした講演で松下さんが「ダム経営」の大切さを説いたときに、聴衆から「どうすればダム経営できますか」と質問が出て、松下さんが「ダム経営しようと強く願うことですわ」と答えました。具体策を期待した聴衆がガッカリしましたが、列の後方で、熱心に聞き入っていた若き経営者は「そうか、強く願うことから始めてみよう」と決意し、実践したといいます。その人物こそ、稲盛和夫さんでした。その後の結果は、みなさんご存知の通りです。

■かりてきたねこ
先日参加した管理職向けのセミナーで、パワハラにならない叱り方のコツとして「かりてきたねこ」を教えていただきました。「か」…感情的にならない「り」…理由を話す「て」…手短に済ませる「き」…キャラクターに触れない「た」…他人と比較しない「ね」…根に持たない「こ」…個別に伝える。ここでも徳川家康の遺訓にあるように、「怒り」は敵でした。冒頭のような失策をしないためには、とかく即座に判断することが求められる風潮に流されることなく、自分と自分たちが自らの感情や体質を正しくコントロールし、いきなり判断・決め付けることなく、物事を冷静かつ客観的に観察し、適切な対処を心がければ、より良い状態に近づけるのだと確信した次第です。