社長とれんど考察

「吐く > 吸う」

■「三・二・十五」の齋藤式呼吸法
斎藤孝さんの『呼吸入門』という本を最近読みました。ほとんどの人たちは呼吸を意識していませんが、「息」は教育の根源であり、日本文化の核心であり、人間が生きることの根幹であるとのことでした。そして斎藤さんは、呼吸法について20年以上も意識的に考え続けられ、長年の研究の結果、「3秒吸って、2秒溜め、15秒かけて吐き出す」という齋藤式呼吸法を編み出しました。深く強い息で体が疲れにくくなり、集中力が高まる効果が期待できるものです。改めて、呼吸という字を見てみると、「呼」は吐くことを意味し、「吸」うより前にくることから、呼吸の基本が吸うことではなく吐くことにあるようです。そこで呼吸(主に「吐く」)にまつわることを連想してみました。

■マインドフルネス
呼吸法といえば、ヨガや瞑想が、瞑想といえば、近年ではマインドフルネスが思い浮かびます。山下良道さんは、「(1)先入観・思い込み・刷り込みをなくし、(2)好き嫌いをなくした状態で、物事を観察すること」とマインドフルネスを定義されています。これを自分なりに解釈しますと、心の中に溜めてきたものを吐き出すことで冷静な心の状態を作ることです。しかし、理屈は分かったとしても、なかなかできないものです。できるようになるには、やはりトレーニングが必要です。ちなみに、仏教での修行は呼吸に気づくところから始まり、自分の心と体を仔細に分析する修行をするそうです。修行にも呼吸が基本的な役割を果たしていると感じます。

■放下着
修行といえば、仏教の中でも禅が有名です。禅語に「放下着」という言葉があります。これは心の中にある執着心を捨てて、心穏やかに生きるという意味です。枡野俊明さんは、著書の中で「放下着」という禅語が生まれた経緯として、「放下着と言いますが、もう私はすべてを捨てきったという思いでいます。もはや捨てるものは何もありません。これ以上、何を打ち捨てろというのでしょうか」という弟子に対し、師が「捨てきったという思いさえも捨てなさい」と答えたという禅問答を紹介されています。過去にしがみついてしまうという人類が持つ執着心を捨てるのも、息を長く吐き出すことから始まっているように思います。

■老前整理
過去を捨て去るといえば、「老前整理」です。これは、坂岡洋子さんが提唱する考え方で、普段から身の回りは整理しておきましょうということです。坂岡さんによる「老前整理」とは、「老いる前」に、気力、体力、判断力のあるうちに行う整理のことで、それまでの人生を整理し、身軽になり、その後の人生をよりよくするための、未来志向の片付けの考え方です。この話に影響され、小職も飾るだけの本などを思い切って処分し、現在は水屋箪笥と机だけになりました。やってみると、モノの整理というよりは、こころの整理、こころのリセットの側面が強いように感じました。やはり吐き出すことはどんな場面にも応用できることを体感しました。

■日に新た
こころのリセットといえば、松下幸之助さんや土光俊夫さんが、よく使った「日に新た」という言葉です。由来は、中国古代殷の湯王が、自分が使う洗面盤に、「まことに日に新たに、日々に新たに、又た日に新たなり」という言葉を彫って、自戒としたというもので、一日一日を新たな日と心掛けることが、次々と新しくなっていく自分を感じられるということです。ともすれば、誰がどうだの、彼がどうしただのと、いつまでも引き摺ってしまいがちですが、常に新鮮な心の状態を持ち続けたい願うことでもあるのです。心の中を常に新しい状態にするには、やはり不要なものは吐き出す必要があります。これに失敗してしまうと、新たな気持ちは起こらないものです。

■息が長い
ビジネスにしろ、スポーツにしろ、どんな分野においても、良い状態が長く続いている人のことを「あの人は息が長い」と言います。前回の「続ける>始める」で、続けることの大切さを書きましたが、まさに息が長いと同義です。その秘訣の一つとして呼吸が関係しているのではないかと感じるようになりました。そもそも呼吸は、誰もが同じようにしていると思いがちですが、ストレスフルな人の呼吸は浅くて早く、肺の中の空気は1回の呼吸で二割程度しか入れ替わっていないと言われます。時には深呼吸すると良いようですが、これは「大きく息を吐くこと」が大切です。小職も「あの人は息が長い」と言われるように、「三・二・十五」からを取り組みたいと思います。