社長とれんど考察

「続ける > 始める」

■創業守成
『貞観政要』という古典に「創業と守成といずれが困難であろうか」という唐の太宗の問いに対して、側近二人が答えるという有名な一節があります。一人は「創業が困難だと思います」と答え、もう一人は「守成の方が困難であります」と反論します。太宗は両者の答えを尊重しながらも、「今や、創業の困難は過去のものとなった。今後は汝等と共に守成の困難を心して乗り越えて行かなければならない」として守成のほうがより大切であると結論を出したのです。無謀にも起業した経験から言いますと、現在の心境は、始めるのは意外と簡単で、守成つまり続けることは、より難しいというものです。そこで今回は、創業守成の故事から、続けることの大切さを考察してみました。

■日本企業の場合
創業といえば、会社が思い浮かびます。中小企業庁の「企業の生存率」という資料では、「起業した後、10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が退出しており、起業後の淘汰もまた厳しい」とあります。また、俗に「3年で3割は消える」と言われるのを聞いたこともあります。創業するには、3年間は売上ゼロでも生活できるくらいの蓄えを準備するからで、その間に売上が思うように増やせない人が3割はいるということと推察します。いずれからも共通して読み解けることは、「守成は難きや」ということでしょう。一時的に発展、繁栄することはあったとしても、継続して発展、繁栄、存続することは至難の業であることは間違いありません。

■江戸時代の場合
創始者が一代で続けられる組織はあれど、例え子息であれ、他人が引き継いで組織を存続させることは、それ以上に困難を伴うことでしょう。わが国においての好例は、約260年もの長きにわたって続いた江戸幕府です。その理由として、朝廷や諸大名の統制がうまく機能し、組織が非常に安定したことがあげられますが、信長・秀吉という前任者の失敗を活かした創始者の緻密な設計があったからとも言えそうです。現代におきかえると、政治家の強力なリーダーシップのもと、政治主導が機能したということでしょうか。最後はそれらに綻びが出てしまいましたが、庶民に平和で安定した生活を提供するという経済政策がおおむね上手くいったこともあるでしょう。

■スポーツクラブの場合
国にしろ、会社にしろ、古今東西、永遠に続く組織はほぼありません。では、個人ではどうでしょうか。続かない身近なケースです。「スポーツクラブの利益の○割は空払い会費?」というようなテレビニュースを見たことがあります。空払いとは、会費を払っているのに来ない人のことです。続けようと決心して入会したものの、忙しさにかまけ、何かと理由つけ、自分に言い訳しながら、だんだん足が遠のいてしまうというのはありがちなことです。会費は自動で口座から引かれるのはわかっていながらも、また行くかもしれないと考えてしまい、さらにずるずる空払いしてしまうのです。痛い目に会っているにもかかわらず、続けたくてもそれでも続かない。これ、経験しました。

■イチロー選手の場合
続けている好事例は、イチロー選手です。「僕には野球の才能はありません。でも、続けることが出来ることを才能と呼ぶのなら僕にはその才能があります。」という名言があります。続けたくても続かないのが人情であり、続けるだけでは成功にはたどり着けません。イチロー選手から教わることは、続けることは成功への必要条件であるものの、十分条件ではないということです。高い目標を設定し、努力を続けつつ、客観的に自分の力を測定していることに秘訣があるように感じます。自分の現状を測定し把握できれば、目標に対する進捗を管理できるので、さらに高みを目指せることにつながるのでしょう。やはり世界レベルの方には何か違うものを感じます。

■志は気の帥なり
「志は気の帥なり」は孟子の言葉です。志は気の親だという意味です。志とは「心の中に自覚される鮮明な目標」であり「それを成し遂げようとする強烈な意欲」が合体したものと定義されます。その志が、本気・やる気・元気・勇気・根気・景気・強気・弱気・病気等々、さまざまな気を起こさせる源泉であると解釈しております。例えば、人は夢を叶えようとするときに、努力をするものですが、これはしんどいことであり、時間もかかるので、そこに到達する前に萎えてしまいがちです。これを超えて、困難や課題を解決し、目標に向け努力を続けていくには、自分を動かすための大義名分が必要です。これこそ志ということでしょう。続けるための秘訣はここにありそうです。