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「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

「暗号 > 字面」

2016年8月1日

■視界不良
六月から七月にかけて、EU離脱の国民投票や参議院選挙、都知事選挙など、内外で大きな選択の場面がありました。まず、イギリスのEU離脱ですが、その決定後、様々な憶測が広がり、この決定を、不安の種のように感じておられる方が多いようです。一方、国内では与党が勝ち、ひとまずは現状路線を発展させていく方向になりましたものの、こちらも少子高齢化の進展する中、不安がなくなったとはいえません。首都東京も同じようなものです。このように、どこの国や地域においても、さらに企業においても、視界不良の様相を呈しているのですが、こういう道が見えにくい環境のもと、私たちはどう進んでいけばいいのかを考察したいと思います。

■暗号の解読?
『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』という本を出された作家の橘玲さんは、著書のなかで「”金持ちになる具体的な方法が書いていないから役に立たない”とお怒りになる方が出てくる。しかし、これは無理な注文というものだ。もし、金持ちになる方法が、千数百円の本に書いてあるのなら、世界中の人が金持ちになっているだろう。あるいは、仮に金持ちになる方法が書いてあったとしても、それは暗号のようなもので、ほとんどの人は気づかないかも知れない。」と言われています。ようするに、どんな場面においても、こうすればいいなんて答えはないのです。そして、答えのない問題を解くには、秘密の暗号を解読できるような力をつけるしかないのです。

■愚者は成事に暗く
秘密の暗号を解くには、秘密の暗号に気づくことが大切です。これを見過ごしてしまうと、解読できず、進むべき道筋を見出すことすらできません。『戦国策』という古典に「愚者は成事に暗く・・・」という有名な一文があります。端的に言うと、「愚か者は、『すでに起きていること』にも気づかない。」ということです。気づかない原因は、二つ考えられます。一つは「起きていることがどのようになるかを想像できない」。もう一つは「そもそも、自分の事として考えていない」です。これらを直すには、「そうなろう、なりたいと思うこと」です。思考は現実化します。あとは、「やる気が出せるか」、「やる気が続くか」どうかです。少なくとも、自分の守備範囲のことには気づいていたいものです。

■知者は未萌に見る
前段の続きは「・・・知者は未萌に見る」です。「賢い人は、物事が形になる前に、動きを察知して、適切な対策を立てられる。」ということです。この方たちの特性は、物事への疑問を放置せず、その原因や経緯を探るなど、理解を深めることができていることです。「日頃からアンテナをはって観察している」ので、それらが適切に蓄積され、その蓄積の中から、環境の求めに応じて、アウトプットできる「洞察力」が育っているのでしょう。どんな組織においても、ごく限られた人たちにはなりますが、まさに、視界不良な状況にある現在、求められている人物像であります。こういう知者がどんどん育っている組織のみが、変化への対応を続けられ、延命できる組織になっていくのでしょう。

■錯覚
選挙報道のIさんのように、「分かりやすい」解説は有難いものです。知らない人たちに伝える能力は卓越していると思います。一方で、やはり本質的なことは難しい。難しいから分かりにくいという側面があることも事実です。表面的なもの、字面が理解できたからといって、すべてを理解したことにはならないのが実際のところです。答えが用意されているのは試験くらいなもので、その答え合わせを限られた時間でより多くできる人たちをわが国では”頭が良い”などと言っているだけのことです。学歴や資格など暗記力を問うものを絶対視するという錯覚に陥らないように注意する必要があります。”イージーカム・イ-ジーゴー”というのもまた本質、つまり、普遍的真理だと言えるのです。

■一休さん
ある会社では、「求める人材像」のひとつとして、”物事を決め付けず、柔軟に変化し、対応できる人”と掲げています。ある意味、簡単に分かることで、その深みまで分かったつもりになる”錯覚”に気づかないことは多々ありますが、分かったと決め付けずに本当の悟りとは何かを追求したのが一休さん(禅師)です。一休さんは、自らの漢詩の中で、「人里離れた山の中で得た悟りはまだ次元が低いもので、逆に広い世界に出ていろいろな人々とともに仏様の教えに近づいてゆくことこそ本当に悟る道である」と示されたそうです。これは、現代の私たちが置かれている視界不良な環境の中で、正しい方向に道筋を見出していくための重要な教訓です。自分の世界観を広げることから、これからが決まるのだと思います。